美容室の開業と費用
美容室は、専用の設備や内装工事にお金をかけることが多いため、開業するとなると、まとまった資金を用意する必要があります。現在、美容室で働いていて、将来は独立を考えているという美容師さんは、こう聞くと心配になってしまうかもしれませんが、開業に当たっては、ある程度の自己資金を用意できれば、金融機関などから融資してもらうことにより開業資金をまかなえます。
美容室の開業にかかるお金は創業融資を利用
美容室を開業する際は、まとまった資金を用意する必要がある…一般的には、700~1500万円程度は、開業と開業後の運転資金として確保しなければなりません。この金額は、なかなか普通に働いていて用意できるものではありません。しかし、ほかのビジネスがそうであるように、美容室の開業においても融資を利用することが可能です。多くの人が利用しているのが、日本政策金融公庫の「創業融資」と呼ばれるものです。
創業融資は、さまざまなビジネスの「創業」をサポートしてくれる融資制度で、比較的スピーディに融資してくれるほか、融資金額の大きさや金利の低さも魅力的です。開業資金は、主に内外装工事、物件の賃貸、専門の設備や備品、運転資金として使用します。
内外装工事は、坪単価で40万円前後かかるのが一般的です。美容室はおしゃれで落ち着く空間。どうしても内装にはこだわりたいという方も多いと思いますが、これはあくまで開業する美容室のスタイルによります。高級店を出す場合は、この坪単価よりも高くなりますが、カットオンリーなど、サービスを限定した店を出すのであれば、内装も簡素で済むので、工事の費用は抑えられるでしょう。
物件の賃貸にかかる費用は、一般の物件よりもかなり高額になります。通常、保証金は家賃の10ヶ月分、礼金や仲介手数料も家賃1ヶ月分とられます。前家賃もあるので、家賃が単純に10万円だったとしても、かなりまとまったお金がかかることがわかります。
専門の設備は、シャンプー台やイスなど、備品には洗濯機や乾燥機、電話、コンピュータなどをそろえる必要があります。もちろん、シャンプーなどもオープン前にまとまった量をストックしておかなければならないので、すべて合計すると、少なくとも200万円程度はかかるでしょう。
自己資金はどれぐらい必要か
一般的に融資を受けて開業資金を準備する場合は、自己資金の比率は30%前後です。50%程度になる場合もあります。ただし、自己資金は多いに越したことはありません。開業資金の総額が1000万円だったと仮定すると、その内の最低300~500万円は自己資金でまかなう必要があります。
日本政策金融公庫では、自己資金の1~2.5倍を融資可能額と判断しているようです。そのため、基本的には自己資金が用意できない場合は、融資も却下されると考えてよいでしょう。
ただし、例外もあります。自宅や土地を担保にできる場合や、とても優れた事業計画と認められた場合には、自己資金なしで融資が受けられる場合があるようです。
美容室開業には助成金も利用可能
美容室の開業に当たり、開業資金は自己資金を用意したうえで、日本政策金融公庫の創業融資を利用するのが一般的だというお話をしてきました。しかし、美容室は開業にお金がかかるため、もう少しバックアップが欲しいとお考えの方も多いことと思います。そこでご紹介したいのが助成金制度です。
助成金制度
助成金は、厚生労働省が管轄している支援金制度のことです。ほとんどが人材育成のために設定されているものですが、これから事業を始めようとしている方が使えるものもあります。助成金のメリットは、返却の必要がないことです。融資の場合は厳格な審査が行われますが、助成金の場合はそこまで厳格ではありません。
美容室開業に向いた助成金
美容室で利用できそうな助成金制度がいくつかあるので、ご紹介しておきます。
・キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は本来、非正規雇用者向けの助成金です。正社員としての雇用や、人材の育成など、目的別にいくつかの種類があります。アルバイトの従業員に、正社員と同様の規定により給料を支払う場合などに助成金を受け取れます。
・人材開発支援助成金
人材開発支援助成金は、従業員の訓練中に、その従業員の給料を一部、サポートしてくれる助成金です。
・トライアル雇用助成金
「試用期間」という言葉があります。経験の少ない従業員を採用後、一定期間、雇用して業務への適性を量ることを目的として行いますが、このトライアルの従業員を採用した際に、トライアル期間中(最長3ヶ月)の給料の一部を肩代わりしてくれるのが、この助成金制度です。
・地域雇用開発助成金
これは、すべての美容室で利用可能なものではありません。求人が少ない地域での雇用に貢献した業者に対し支払われる助成金です。
少しでも初期費用を抑えるためにできること
開業資金を準備し、いよいよご自身の美容室の開店計画が動き始めました。しかし、美容室の開業にはご紹介したとおり、かなりまとまったお金がかかります。そのため、どうしても潤沢な資金を用意することは難しいという場合は、工夫をして初期費用を抑えましょう。少しでも初期費用を抑えるためにできることをまとめてみました。
物件は居抜き物件を選ぶ
居抜き物件は、前の入居者がすでに美容室を経営していた物件です。そのため、内装や電気などの設備については、そのまま使用することができます。もちろん、手を加えることも可能ですが、すでにほぼ営業を始められる状態の物件なので、あまりお金がかかりません。
資金にあまり余裕がない場合は、最初から居抜き物件に絞って物件探しをするとよいでしょう。ただ、前の入居者がビジネスをやめているという事実には留意する必要があります。物件が人の流れから外れているのかもしれませんし、もしかしたら、ビジネス拡大のために移転したのかもしれません。
内装業者の比較サイトをチェック
近年、多くの業種の「比較サイト」が目立つようになりました。全国にある内装関連の業者が登録されている比較サイトもあります。このような比較サイトを利用すると、気になる複数の業者に一括で見積もりを依頼することができるので、かんたんに業者を比較可能です。
ただ、ここで注意すべきなのは、必ずしも見積もりの安い業者を選ぶのが得ではないということです。内装工事や設備工事には相場があります。相場は一括見積もりによりだいたいつかめるはずですが、その範囲から大きく外れて安い、もしくは高い業者については、疑ってかかったほうがよいでしょう。
少し安めの建材を使う
建材のグレードを若干落とすだけでも、工事にかかる費用を節約することが可能です。美容室はインテリアにこる傾向がありますが、実は水回りや衛生に関連する部分の工事が多く必要とされるため、こちらでもかなりお金がかかってしまいます。
少し安めの建材を使うことは、安全性を削ることではありません。建材のグレードを落とす場合は、前もって業者と打ち合わせしておく必要があります。
まとめ
美容室の開業にはまとまったお金を用意する必要があるとはいえ、これまで夢に見てきた店ですから、ご自身の理想を、しっかりと形にしたいものです。この記事ではお金のことを中心にお話ししてきましたが、お金も含めて、準備をしっかりすることが成功への第一歩です。周到な準備が、息の長い経営につながります。